2026.6.24

【倉庫寄託約款の改正】で何が変わるのか

今回の改正は1959年の制定以来60年超ぶりのアップデートです。

この改正、一言で言えば「倉庫の『無料サービス』はもう終わりにしよう」という国からの強いメッセージ。

これによって現場はどう変わるのか? 倉庫側・荷主側が今すぐやるべきことを解説します!

倉庫寄託約款は何が変わったのか?3つの大きな改正点

今回の改正の柱は、大きく分けて以下の3つです。

①「附帯業務」の有償化が明文化された!

これまで「保管料」の中にうやむやに含まれがちだった、仕分け、検品、ラベル貼り、手荷役、開梱検品などが明確に「附帯業務」と定義されました。

これらを荷主の指示で行う場合、基本料金とは別に「別途料金を請求できる」とルール化されたのです。

②「急な無茶振り」へのペナルティ条項ができた!

十分な時間がない緊急の入出庫指図や、直前のキャンセルに対して、追加費用を請求できるようになりました。現場を疲弊させる「荷待ち・荷役時間」を減らすための牽制球です。

③ 国の「告示」に格上げされた!

法的な位置づけがこれまでの「通達」から「告示」にランクアップ。倉庫業者が荷主に対して「国のルール(告示)に基づいて請求しています」と、堂々と言える根拠ができました。

なぜ今まで「附帯業務」の定義が無かったのか?

理由は簡単。「附帯業務」の概念が弱く、定義されていなかったからです。

以前は複雑な業務は無かったが、年月が経つなかで倉庫の役割が増え、作業が増加していたことにより、荷主も倉庫側も「仕分けや検品は保管料に含まれるもの」として処理するのが商慣行として増えていったのだと考えられます。

しかし、人手不足と人件費の高騰が続く今、「すべて倉庫側の身を削って吸収するのはもう限界!」と業界団体が声を上げ、国を動かしたのが今回の背景です。

【要注意】約款が変わっても、自動的には料金はもらえない

ここで注意したいのは、「4月1日になったからといって、自動的に明日からの請求書に色をつけられるわけではない」という点です。

国交省のパブリックコメントでも、「既存の契約は、当時の合意内容がそのまま適用される」と明記されています。つまり、個別の「契約書」を書き換える話し合いをしない限り、実態は無料のままになってしまいます。

「請求できる根拠」はできましたが、実際にそれを勝ち取るための交渉はこれからなのです。

現場を動かす「3つの強力な外圧」

「そうは言っても、荷主が値上げに応じてくれるわけないよ…」と思う倉庫業者さんも多いはず。ですが、今回は約款改正だけでなく、強力な3つの法律(外圧)が背中を押してくれています。

 

関連法 荷主にかかるプレッシャー
 ① 取引適正化法(改正下請法)  契約にない仕分けや検品をタダでやらせ続けると、荷主側が「不当な経済上の利益提供要請」で違法リスクを負うことに。
 ② 改正貨物自動車運送事業法  運送契約の際、荷役などの附帯業務は「書面化」が義務に。倉庫側だけうやむやにするのは不整合になります。
 ③ 改正物流効率化法  大手荷主は「荷待ち・荷役時間」のデータを国に提出する義務が発生。倉庫の作業実態が数値として丸裸になります。

約款は倉庫側に「請求していいよ」と言っていますが、これらの法律は荷主側に「タダ働きを強いるとペナルティだよ」と言っているのです。ベクトルが両側から向いているのが、今回の一番のポイントです。

今すぐ、倉庫業者と荷主がやるべきこと

60年続いた商慣行を変えるため、双方が今すぐ動くべきアクションリストです。

🏭 倉庫業者:まずは「料金表」に新しい行を作ろう

  1. 自社の料金表を開き、「附帯業務」の項目があるか確認(なければ即新設!)。
  2. 現場で「仕分けやラベル貼りに何人、何時間かかっているか」を数値化する。
  3. 契約更新のタイミングで、改正約款と取引適正化法をセットに交渉し、まずは請求書に「附帯業務料」という項目(行)を立てる。

📦 荷主企業:「タダでやらせるリスク」を認識しよう

  1. 自社が倉庫に依頼している作業の範囲を棚卸しする。
  2. それが「保管料込み」という曖昧な状態になっていないか確認する。
  3. コンプライアンス(違法リスク)の観点から、倉庫側から改定の打診が来る前に、適正な対価の支払いに向けた社内調整を始める。

まとめ:約款は変わった。次は「契約」だ!

今回の改正は、倉庫と荷主の力関係を一夜にして逆転させる魔法ではありません。

それに今までも項目が無くても保管料や荷役料の中に作業代金を含んでいたと思います。

一番大きな変化は項目が割かれたことにより、「ついでにやってよ!」のサービスが今まで以上に表面化しやすくなったことだと思います。1つの作業で見積もっていた作業が2つに増えた場合、当然ながら追加の作業を認識しやすくなり、交渉テーブルも用意できる事に繋がります。

今後も物流を持続可能なものにするために、今こそ「なあなあ」の取引を終わらせる事が重要となります。

【参考資料】国土交通省のホームページに掲載されている内容

改正の概要

<取引の適正化・物流の効率化>

附帯業務等の規定(第4条)

・倉庫業者の業務に含まれない、受寄物の仕分けやラベル貼り等について、寄託者より対価が支払われないままに従事することを要求されることがあるため、これらを別途料金を要する附帯業務として規定する。

・緊急の入出庫オーダーは、トラックの荷役・荷待ち時間の増大や作業の非効率化につながるため、別途費用を請求できることとする。

賠償額の上限設定(甲普通:第47条第2項、甲冷蔵:第48条第2項、乙普通:第43条第2項、乙冷蔵:第44条第2項)

・日付逆転の出庫等の債務不履行やブランド毀損等を名目に、倉庫業者への損害賠償請求が過剰になされる場合がある。よって、第1項に規定する受寄物の滅失又は損傷による損害以外の賠償については、当該受寄物に対する既発生料金の総額を限度とする。

賠償した損害受寄物に関する権利取得の明記(甲普通:第48条、甲冷蔵:第49条、乙普通:第44条、

乙冷蔵:第45条)

民法第422条に基づき、現行の標準約款においては、倉庫業者が受寄物に対して全額賠償した場合、倉庫業者が当該受寄物における一切の権利を取得することとなっている。

しかし、全額賠償した後であるにもかかわらず、寄託者が倉庫業者による処分方法に対して制限をかけることが多いため、当該標準約款において任意の方法で処分できることを明確化する。

近年の業務実態等への適合

FAX・電子データによる意思表示の明記(第5条等)

・寄託者等と倉庫業者との取引において、近年ではFAXや電子データによる意思表示が一般的であるため、これらが意思表示の手段として有効であることを明確にする。

システム障害等の機能支障への対応(第9条等)

寄託者の要請等により、倉庫業において自動化機器及び情報システムの役割が大きくなってきているところ、これらをはじめとする設備に支障がある場合に、倉庫業者が寄託に係る業務を一部拒否することができるようにする。

引渡しによる寄託契約成立の明記(第12条第2項)

・現行の標準約款では寄託契約の成立について明確に規定を置いていなかったところ、寄託の申し込みの承諾によって契約が成立したと解釈した寄託者が、入庫前に生じたデマレージ*を倉庫業者に負担させようとするなどのトラブルが発生していることから、引き渡しによる契約成立を明確化させる。

*国際貨物が、コンテナヤードに無料で保管できる期間(フリータイム)を超えて保管された場合に課せられる「超過保管料」。

受寄物の内容不検査の明記(第14条)

・現行の標準約款において、受寄物の内容検査は、寄託者の費用において、承諾を得た上で「できる」と規定をしているが、倉庫業者が入庫時に受寄物の内容の検査を行い、受寄物の品質を確認していると誤認識されることがある。

そのため、原則、倉庫業者による受寄物の内容検査は行わない旨を明確化する。

在庫証明書の新設(甲:第17条、乙:第15条)

・在庫証明書は、倉庫に保管されている受寄物の数量等を証明する書類であり、寄託者が決算時の資料等として用いるため、倉庫業者に発行させている。

・在庫証明書は一般的に利用されている書類ではあるものの、現行の標準約款には規定がなく、倉荷証券と同等の効力を持つとの誤解がなされる場合がある。

(倉荷証券は在庫の証明ではなく商品の引渡し等を目的とした有価証券であり、発行主体は国土交通大臣の許可を受けた倉庫業者等に限定される)

・本改正ではその位置づけを明確化し、関係者間の誤解による紛争を防ぐ。

面積建保管の新設(甲普通:第21条、乙普通:第17条)

標準冷蔵倉庫寄託約款には「容積建保管*」が規定されており、普通倉庫業界においても実態として同種の契約が存在したものの、標準倉庫寄託約款には規定されていなかったため、「面積建保管」として新設した。

*貨物の重量・個数等ではなく、使用する倉庫領域に応じて料金を決定する契約。

混合保管要件の見直し(甲:第23条第1項、乙:第19条第1項)

・現行の標準約款においても定められている混合保管について、倉庫業界の業務実態に即し、各寄託者に個別的に承諾を得ずに混合保管が可能であることとする。その際、混合保管が可能な貨物の条件をより具体化する。

※普通倉庫と冷蔵倉庫では扱う貨物の性質が異なるため、混合保管の要件(同一であるべき貨物の性質)が一部異なる

期限の利益の喪失に関する条項の新設(甲普通:第53条第2項、甲冷蔵:第54条第2項、乙普通:第49条第2

項、乙冷蔵:第50条第2項)

・契約書に一般的に盛り込まれる、「期限の利益の喪失」条項を当該標準約款にも盛り込む。

・寄託者の信用が大きく損なわれた際に、倉庫業者は直ちに全ての債権を回収できることとする。

2026/6/30

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