2025.11.7
海上輸送を支えるフェリーの現在と未来
目次
海上輸送を支えるフェリーの現在と未来
日本は物流の多くはトラックで行われている。しかし「鉄道」や「海上輸送」も日本経済を支える欠かせないインフラの一つである。
近年、長距離トラックドライバー不足や環境負荷軽減への意識の高まりもあり、「フェリーによる貨物輸送」も注目を集めている。
■ フェリー輸送とは
フェリーとは、人や車両をそのまま乗せて運ぶことができる船舶のことを指す。旅客を対象とした「旅客フェリー」もあれば、貨物輸送に特化した「貨物フェリー」もある。トラックごと積み込むことで、ドライバーが運転し続けることなく車両と荷物を目的地近くまで輸送できる点が最大の特徴だ。
例えば、本州と北海道、本州と九州、四国など、陸上輸送だけでは距離が長く、時間やコストがかかる区間で活用されることが多い。苫小牧―大洗、新門司―大阪、志布志―東京など、日本各地で多くの定期フェリー航路が運航されている。
■ フェリーが再評価される理由
ドライバー不足の解消
トラック業界では、長距離輸送を担うドライバーの高齢化が深刻だ。特に2024年に施行された「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制(いわゆる“2024年問題”)によって、従来の長距離輸送を維持することが難しくなっている。
フェリー輸送はこの課題に対する解決策の一つとされる。トラックをフェリーに積み込み、航海中はドライバーが休息できるため、拘束時間の短縮と労働環境の改善が同時に実現できる。
■ フェリー輸送の仕組みと実際
フェリーの多くはトラックやトレーラーをそのまま船に乗せ、港に着くと自走で下ろす仕組みだ。荷物を積み替える必要がないため、積卸作業の時間短縮にもつながる。

また、最近では「ドライバー分離輸送」も一般的になっている。これは、トレーラー(荷台部分)のみをフェリーに積み込み、ヘッド(運転席部分)は別の場所で業務を行う方式だ。航海中は人を乗せないため、フェリーの旅客スペースを節約でき、安全面でもメリットがある。
■ フェリー輸送の課題
フェリー輸送にも弱点はある。天候に左右されやすく、台風や荒天時には欠航のリスクがある。また、港へのアクセスや航路の本数に制限があり、陸上輸送ほど柔軟にスケジュールを組むことは難しい。
さらに、船舶の老朽化や港湾施設の整備コスト、燃料価格の変動など、運営側が抱える課題も少なくない。
■ 未来のフェリー輸送 ― 静かな変革期へ
国の政策面でもフェリー輸送の支援が強化されている。国土交通省は「モーダルシフト推進施策」を掲げ、鉄道・船舶への転換を促進。補助金制度や港湾インフラ整備を通じて、持続可能な海上輸送網の構築を目指している。
■ 終わりに ― 見えない海の道が支える日常
フェリー輸送は、派手さこそないが、陸・海・人をつなぐ“縁の下の力持ち”である。
これからの日本の物流を考えるうえで、フェリーという選択肢を再認識することは、持続可能な社会を築くための第一歩だろう。波の下には、確かな未来へと続く「もう一つの道路」が広がっているのだ。
2025/11/25